給料・不動産が差押さえされた!差押えの解除は可能なのか?


「給料が差押えされてしまった!生活に困るため、すぐに解除して欲しい!」

「差押えがあるけれど自宅を売却したい。どうしたらいいの?」

このように、差押えをされてしまった場合に解除するにはどうするべきなのか?

すぐにでも解除して欲しいものの、この差押えの原因は「債務の滞納」であるため、原則、全額弁済しない限り差押えを解除してもらうことはできません。

差押財産の対象になるのは不動産や預貯金・給料などであり、絵画・宝飾品などのように資産価値がある動産も含まれますが、「差押」がされやすいのは債権者が把握のしやすい給料や不動産であることが多く、生活に直結した財産であることがほとんどです。

また、差押えはある日突然に、裁判所から差押さえ命令を受けるわけではありません。
通常であれば差押さえを受けるまでに、電話や書面による督促が来ているからです。

既に差押さえされてしまった段階まで来ると、放っておいたとしても解除されることはない為、何らかの対応をしなくては最終的には競売など取り返しのつかないことになる恐れもあります。

ただし、例外的に差押えを解除することが可能になることもあるため、どんな場合に差押えの解除ができ、中止、失効となるのか解説致します。

 

差押解除の要件

はじめに、「差押」は支払いが滞っている債務者に対し、その債権者が裁判所を通じて行なう「強制執行」という債権回収方法であるため、「税金や金融機関からの借金の滞納による差押えは、原則として、交渉しても全額返済しないと解除に応じてもらえない」と認識しましょう。

(類似記事⇒差押えとは何?)

 

債務や税金を滞納している場合は、全額弁済する

つまり、債務や税金を滞納している場合は、全額弁済することで差押解除をしてもらえます。

差押えは、債務者が債権者に対して金銭的債務がある状態で、弁済を履行しない場合に、債権者が債務者の不動産や預金などの財産から満足を得ることを目的としているからです。


和解交渉により弁済猶予をもらう

次にどうしても全額返済することは難しい場合に、和解交渉により弁済猶予をもらう方法があります。

本来、全額一括返済しなければ外してもらえない差押えですが、明確な分割弁済の見通し、計画を示すことによって債権者が任意に取り下げることもあります。

市税などの地方税も自治体によって弁済猶予の内容は多少異なりますが、市税事務所にて収入が復活する見通しや返済計画を示すことによって、弁済の猶予をされることがあります。

注意点としては、誠意ある対応をすること、しっかりと分割弁済の期日を守っていくことです。


差押禁止債権の範囲の変更を申し立てる

次に、差押えされたものが給料であった場合、「差押範囲の縮減の申立」という手続きがあります。

基本的に給料の4分の3については差押えを免れるわけですが、いままでの生活費で足りずに滞納してしまっていることもあり、家族構成や状況によっては直ぐに生活が成り立たなくなってしまいます。

この場合は、政令に定められた給与等の差押えの範囲では生活が苦しいことを理由として、それを証する文書を添付した申立書を裁判所に提出することによって、差押え範囲の変更をしてもらいます。

しかし、これはあくまで「客観的に最低限度の生活が維持できるかどうか」を基準に考えるため、「いままでの生活レベルを維持できるかどうか」は関係ありません。

つまり申立てをしても「贅沢」であると認識されてしまった場合は認めてもらえないため注意しましょう。


違法性を主張して処分の取消を求めることができる

次に違法性を主張して処分の取消を求めることができる場合があります。

近年では、税金未納の滞納処分が強化されたこともあり、給料の4分の3については差押えを免れるはずが、指定口座に振り込まれた給料を、「預金の差押」という形式として、その給料の「全額」について差押えることで、すべてを取り立ててしまう事例も報告されています。

このように生活へ直接影響する差押処分は違法であり、この場合は処分の取り消しを求めることができます。

ただし、経済面等の理由で提訴できない場合や、行政不服審査の段階で棄却(門前払い)された場合、違法な差押えに「泣き寝入り」せざるを得なくなってしまいます。


自己破産・個人再生の債務整理をする

次に、自己破産・個人再生の債務整理をするという方法です。
どちらも借金を整理するための手続きであり、後述する手続きから差押えを解除できます。

 

【自己破産】

「自己破産」で手続廃止決定を受けたときは、差押手続を中止させることが出来ます。

自己破産とは、債務者の債務の全て(但し、税金等は除く)の免除(免責)を裁判所に認めてもらう債務整理の方法の1つです。

仮に給与が差し押えられている場合、財産がないことが明らかで破産手続開始と同時に破産手続廃止となれば、破産手続開始決定により差押えは中止となります。


ただし、ここでいう手続の「中止」とは、「解除」とは異なり、差押手続自体はまだ残っているため、差押対象の給与を、すぐに債務者が受け取ることは出来ません。

そのため、差押分の給与は、一旦勤務先にプールされることになります。

その後、下記で説明する自己破産が認められる(免責許可)を受けることで、借金がゼロになり、新たな生活を始めるために給料の差押えもなくなります。

 

さて、この自己破産の免責許可は、破産管財人が付かない場合と、付く場合とで多少異なります。

①破産管財人が付かない破産手続(同時廃止)は、免責許可の決定がおりたその時点で、給与差押手続が失効します。
すると債務者は、その後に支給される給与を満額受け取れるようになり、差押手続が中止されて以降に勤務先にプールされていた給料も受け取れます。

 

②破産管財人が付く破産手続(管財事件)として処理される場合には、破産手続開始決定が出た時点で、給与差押命令は失効します。

この自己破産手続が開始された時点とは、「執行取消しの上申書」を破産管財人が給与差押さえを執行している裁判所に提出したときです。
これにより、給与差押さえは解除され、それ以降に支給される給与を満額受け取れるようになります。

したがって、同時廃止と比較すると、管財事件の方が、給与が満額受け取れるようになる時期が早いことになります。

 

【個人再生】

もう一つは、「個人再生」で給与差押さえを止めることが可能です。

個人再生とは、裁判所に申立をして、借金の金額を5分の1など大幅に減額してもらえます。
減額された債務を原則3年(最長5年)で返済していく個人再生計画を自分の収入に合わせた無理のない額で決定します。

 

そして個人再生によって給与差押さえを止める方法は、「個人再生申立後の強制執行中止命令申立」と「個人再生手続き開始決定」とで少し異なります。

①「強制執行中止命令申立」は、個人再生の手続き開始決定が出るまでの間に裁判所に対し「強制執行中止命令」を申し立てるのです。

開始決定まで時間が掛かるため、生活に支障が出ると裁判所が判断した場合、差押えを止めることができます。

なるべく早く差押さえ解除を求める場合は、早急に裁判所に「強制執行の中止命令」を出してもらうようにしなくてはいけません。

 

②「個人再生手続き開始決定」となればその時点で当然に差押えは止められます。

個人再生の申立に書類上不備がなく、個人再生委員も再生計画に「問題ない」という判断が下りれば、裁判所が「個人再生手続き開始決定」を出します。

強制執行の申立は必要ありません。

ただし、中止命令がでても給与の4分の3を超える額については、一旦勤務先にプールされたままになります。
個人再生計画の認可決定が確定すれば、このプールされた分と満額の給与支払いを受けることができるようになります。

気を付けるべきことは差押えが中止されても、すぐに満額の給与を受け取ることはできないということです。

 

不動産の差押解除とは

2章では、差し押さえられる対象別に解除の注意点を解説致します。
まずは不動産の差押解除についてです。

 

差押え登記がついてしまうと、不動産は自由に売却できない

「差押登記」がついてしまうと、不動産は自由に売却できません。
差押えが入った家はいつ競売や公売になってしまうか分からない状態です。
そのような家を買う方はいないため、売却したいというタイミングで差押え登記がある場合は先に解除してもらわなくてはいけません。

解除の方法としては、売却代金の利益を分配するなど約束をして、差押えの債権者と和解することにより、差押えを解除してもらうことができます。

仮に、税金の滞納が続いた場合にそのまま解除することなく放っておくと、最終的には公売という手続きで強制売却されてしまう恐れもあります。

どれくらいの金額や期間の滞納で公売になるかという規定はなく、市区町村やその案件ごとの個別の判断で決定されるため、すぐに追い出されないからと言って対処せずにいることは避けましょう。

 

住宅ローンが残っている場合は任意売却を検討する

差押えがあり、さらに住宅ローンが残っている場合は任意売却を検討してみましょう。

任意売却とは、住宅ローンの残債が不動産価値より上回っている状態のオーバーローンの時に売却する唯一の方法とされています。

差押えがある状態で債務者の生活が苦しくなり、住宅ローンの支払いまで滞納してしまっていたら、債権者は結果債務の回収ができません。
より高値で売り、返済できる金額を多くするために、任意売却が認められるのです。

ただし、この場合は住宅ローンの債権者に、売却の同意を得なくてはいけません。
また、オーバーローンということは、残債を超えた売却益が出ないため、住宅ローン債権者と差押え債権者が合意しないといけないのでより難しい売却交渉になります。

このような時は、任意売却専門に依頼することで売却が可能になるかもしれません。

任意売却について詳しくはこちら>>


不動産の差押えから競売になることもある

そのため、前述した任意売却に失敗すると、不動産の差押えから競売になることもあります。

つまり差押え解除の交渉がうまくいかなかった場合や、そもそも任意売却も買い手が見つかからなかった(売れなかった場合)ときは残念ながら競売へとすすんでしまいます。

 

給与の差押解除とは

次に、給与の差押解除についてです。

債権額が全額回収されるまで差し押さえの効力は継続される

債権額が全額回収されるまで差し押さえの効力は継続されます。
つまり、何かしらの対処をしなかった場合は、債務額分の給料を給料の4分の1ずつ回収するために何カ月も続くということになります。

もちろん、この場合勤務先を通じて差押えされているため、賞与差押えなどにも影響する恐れもあります。

 

差押えられた金額は返金されない

差押えられた金額は返金されないと認識しましょう。
1章でお伝えした差押え解除の要件を満たしても、既に債権者に回収された分は戻りません。

また前述した通り、債務整理を行ったとしても、全額給与が受け取れるまでには時間が掛かります。
そのため、差押えがされた場合は、なるべく早く動くことによってご自身の生活を守ることができるかもしれません。

 

差押えの解除の通知について

最後に、差塩さえ解除の通知についてですが、口頭ではなく文書で通知されます。

 

差押解除通知書により差押えを解除した旨が通知される

差押解除通知書により差押えを解除した旨が書面によって通知されます。
滞納額が完納となった段階で、差押解除通知書を債務者(事業主及び個人)本人に送付されます。


差押えの取消しは最初から差押処分がなかったものとなる

稀に、差押えに不正がある場合など「差押取り消し」となった場合は、最初から差押処分がなかったものとなります。
そのため、この場合差し押さえによる時効の中断は完成しません。

もちろん、差押えが取り消しにならなかった場合、時効は中断しますので、時効期間は延長され、債務はなくならないということです。

 

まとめ

今回は差押え解除の要件をお伝えしました。

原則は全額返済をしなくては解除されませんが、直ぐにお金を用意することは難しい場合があります。

そのようなときは、「差押」を放っておくのではなく、どのように進めたらよいかまずは専門家に相談しましょう。

差押え解除に向けて一番良い方法で対処することが大切です。

 

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